グランドピアノの調律を知る
グランドピアノは定期的に調律が必要な楽器です。調律というと少し固い響きに聞こえますが、チューニングのことです。調律という言葉は、ピアノ以外の他の楽器にももちろん使えますが、やはりピアノを一番にイメージしてしまいますね。
グランドピアノやアップライトピアノの調律は、音程を合わせるチューニングがメインの作業になります。しかし一般的には、それに付随する「整音」や「修理」「清掃」といったメンテナンス作業も含まれます。
グランドピアノが生まれたのは18世紀です。18世紀のピアノは現在のものと比較してかんたんな仕組みでした。まだまだ生まれて間もない楽器であり、この時代は演奏者自身が調律を行うことも多かったようです。
19世紀後半から20世紀初め頃には、グランドピアノはほぼ現在と同じ、ひじょうに精密な仕組みを持った楽器に進化します。調律には精度の高い技術が必要となり、必然的にピアノ調律師という職業が生まれました。現在のヤマハ株式会社の基「日本楽器製造株式会社」を設立した山葉寅楠(やまはとらくす)は、最初期のピアノ調律師と言えるのではないでしょうか。
日本では19世紀の終わり頃にピアノの製作が始まりました。上流階級に限られましたが、ピアノを設置する家庭も徐々に現れ、調律を職業とする者も同時に現れました。しかし調律師という職業が社会的に認知されるのは、昭和に入ってからのことになります。
グランドピアノを含むピアノの調律は「ピアノ調律師」が担当します。ピアノ調律師は、音楽大学や専門学校、ピアノメーカーが設立した養成機関などに1~2年通い知識とテクニックを学びます。ピアノ調律師に必要とされる要素はさまざまですが、もっとも重要とされるのは「音感が優れていること」でしょう。
「ピアノ調律技能士」という、厚生労働省による国家資格がありますが、ピアノの調律を行うに際し、この資格がなくても問題なく調律を行うことはできます。少々古いデータですが、2012年現在、日本全国でピアノの調律を行っている調律師(自営業者やメーカー所属すべて含む)は、約6000人とされています。
また「スタインウェイ・アンド・サンズ」「ベヒシュタイン」「ベーゼンドルファー」といった世界三大ピアノメーカーや、日本の「ヤマハ」「カワイ」なども、優秀な技能士を育成するために独自の研修制度を設けています。
グランドピアノの調律
グランドピアノの調律プロセスは、実は意外にシンプルな作業です。エレクトリックチューナーでひとつの音をチューニングするのであれば誰でもできますが、作業のすべてをマスターすることが難しいことなのです。そのためにプロたちは大学や専門学校で、多くの時間を割きます。
グランドピアノはひじょうに精密に作られている楽器で、他の部品との関係、部品の消耗などを考慮して作業する必要があり、そのあたりは経験や感性といった部分が大きく仕事に影響します。また、グランドピアノに限らず、多くの楽器は温度や湿度の変化で音程に変化が出る、デリケートな面を持っています。素人でもかんたんにできる仕事であれば、音楽大学に行ってまで学ぶ必要はないでしょう。グランドピアノの調律は、やはり特別な仕事なのです。
グランドピアノの調律に使う道具
チューニングハンマーは、ピアノを調律するための専用工具です。チューニングハンマーは、ピアノの調律において最も重要なツールです。チューニングハンマーは、ピアノの弦が巻かれているチューニングピンを回すためのもので、星形レンチのような工具です。調律の際はピンにあった番手のチューニングハンマーを使います。最も使う頻度が多いのは「#2」でしょう。
チューニングハンマーを使用する際は、ピンにしっかりとはめ込み、微妙な動きを感じながら、コントロールを維持します。クオリティーの高いツールは、手にフィットし、その感触を損なうことがありません。微妙な感触を大切にしなければならない作業だからこそ、高品質、高精度なツールが必要なのです。チューニングハンマーに「安い」「初心者向け」などのラベルは必要ありません。本当のプロならば、手になじむツールを使っているはずです。
ひとくちにグランドピアノと言ってもさまざまなメーカーから、さまざまなモデルが世に送り出されており、キャビネットの大きさからパーツ間のクリアランスに至るまで、大きく違います。そのため、ひとつのツールですべてカバーできると言うことはありえません。状況に応じたツールが必要になります。チューニングハンマーにも、ヘッドが交換可能なものやグリップの長さが異なるものが用意されています。
多くの調律師が、チューニングハンマーのハンドルが変わると、音の聞きどころも変わると言います。ハンドルの材質の違いで伝わる振動が違う。調律師は耳だけでなく、手でも音を聞いているのです。
ミュートはゴムやフェルトといった素材でできた調律用ツールです。グランドピアノの、ひとつひとつの鍵盤には、2~3本の弦が張られていることが普通です。調律では、この1本1本それぞれの音を聞き分ける必要があるため、このミュートというツールを使用します。
チューニングハンマーやミュートの他にもツールが必要な場合があります。キャビネットの一部を取り外すためにドライバーが必要になったり、ライトが必要になったりするケースはよくあります。また、ホコリなどを取り除く清掃用具の準備も必要です。
調律師によっては、エレクトリックチューナーを使用する人もいます。グランドピアノには200本をこえる弦があり、そのそれぞれを手作業で聴いていくことはたいへんな作業です。エレクトリックチューナーを使えば、微妙な工程もすばやく合わせることができるため、作業の効率アップが期待できます。しかし、チューニングピンで音程を合わせることには変わりなく、この調整度合いに関しては、調律師の感性に依存する部分が大きくなります。調律師はやはり「職人」です。
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