グランドピアノ調律の手順など
2019年11月01日 11時35分
最初に合わせる、調律の基準と鳴る音は、鍵盤の中央にあるA(ラ)の音です。国際的にはA4と表記される音で、周波数は440Hzです。音叉(チューニングフォーク)を使用して合わせますが、場合によっては442Hzなど高めにチューンすることもあります。エレクトリックチューナーで合わせる場合もあります。
A4の鍵盤にある3本(ピアノにより数は異なる)の弦を1本ずつ、正確に440Hzに合わせていきます。
注意深く操作することが求められるチューニングハンマー
ピンは誤った操作をするとかんたんに曲がったり傾いたりしてしまいます。チューニングハンマーの操作に横方向や縦方向の動きはありません。常に円状に動かしますが、とにかく操作には細心の注意が求められます。「ゆっくり」と「正確」に動かします。ちなみにピンは右に動かすと絞まり、左に動かすと緩みます。- やりすぎない
- とにかく細心の注意を払って音を聞く
- グランドピアノ調律メソッド・プロそれぞれの調律メソッド
3本すべての弦が正確にチューニングされたら、1オクターブ上の同じA(A5)をチューニングします。A4とA5が完全にナチュラルに響くよう、耳をフルに働かせます。
- グランドピアノの調律はうなりを利用する
グランドピアノの調律では、ピッチを合わせる場合を除き、ピアノの音を比較することで音程を合わせます。この「うなり」の調整が調律と言ってもいいでしょう。この作業はチューナーを使うのではなく、必ず耳を使います。
Aが終わったら、その後は同様に他の音も合わせていきます。
- インハーモニシティ
本来であれば整数倍で出現するはずですが、ピアノの場合は高音域では高く、低音域では低くなる特性があります。これはピアノの弦が高い剛性を持つこと、またピアノの音域の広さに由来するものだと考えられています。このインハーモニシティ(非同調性)があるために、単純にエレクトリックチューナーで音程を合わせることができないのです。
- グランドピアノの整調
システムが正常に作動しなくなると、引き心地に大きな影響を与えるため、「整調」して各パーツの動きを整えてあげる必要があります。
- グランドピアノの整音
グランドピアノのハンマーのヘッド部分にはフェルトが使われていますが、長期間連続して使用した場合に、フェルトに溝のような弦の痕がついてしまい、音質が変わってしまうことがあります。このような際には、紙やすりでフェルトを整えます。音質を変える場合には、ヘッドのフェルト部分に硬化剤を入れたり、アイロンで固めたりします。
長い間調律が行われていないグランドピアノは、多くの弦の張力により、響板が適切な状態になっていないものと考えられます。響板が設計された状態にないと、適切な調律を行うことはできません。
このような場合、ほとんどは調律ではなくオーバーホール(修理)という形になります。長期間、放置されたグランドピアノは、その保管状況により、状態の善し悪しが大きく変わってきます。グランドピアノは木材や金属、樹脂、接着剤などから構成されています。木は温度や湿度により伸縮します。これが長期間にわたるわけですから、ひどい場合には部分的にヒビが発生したり、金属パーツにサビが発生したりすることがあるでしょう。
グランドピアノのオーバーホールは通常、工房にある程度の期間預ける必要があります。グランドピアノ内部の清掃、ピンやフェルト、弦などのパーツ交換により、オリジナルの状態を回復することを目指します。
年に1回の調律で、孫の代までグランドピアノ
グランドピアノは楽器の女王とも言われる、美しく、そして威厳を感じさせる楽器です。そして定期的に調律とメンテナンスをすることで子供の代、孫の代まで、その美しい音色を響かせてくれます。日本の家庭では、購入後7~8年もすると、年1回の調律を止める家庭が増えると聞きます。一度、手入れを怠ったグランドピアノは、元の状態を取り戻すために、かなりの時間と金額を要すること